Sub-Dモデリング+AI — 自動車内装コンセプトを判断できる幾何形状へ

Sub-Dを土台にAIで視覚反復を回し、内装コンセプトを判断できる幾何形状へ。三つのループ、正直な限界、そしてクラスAへ引き継ぐまでの実務を解説します。

自動車内装のコンセプト工程は、静かなボトルネックです。詰まっているのは創造力ではありません。優れたアイデアと、判断に使える幾何形状との間にある隙間です。PSH Designでは、Sub-Dモデリングを土台に、その上でAIによる視覚反復を回すことで、この隙間を詰めています。以下はその実務の中身です。

 

ボトルネックはどこにあるのか

多くの内装デザインスタジオでは、ブリーフから「設計と技術の双方が合意できる3D方向性」までに8〜16週間かかります。複数の車両プログラムを並行して回している場合、内装コンセプトから技術部門への引き継ぎが一度遅れるだけで、検証ゲートに波及し、遅れた週の分だけ実費が積み上がります。

過去数十年で、自動車内装のコンセプト工程は純粋なクレイから、デジタルスケッチ・3Dブロックアウト・CG・クレイ検証を組み合わせた形に進化しました。クレイは今もクリニックや経営層レビューで重要な役割を果たし、2Dレンダリングとフォトリアルな映像は社内および広報との主要な伝達手段になっています。

この仕組みは美しい画像を大量に生み出します。しかし、承認されたビジュアルと、技術部門が実際に使える幾何形状との間の隙間は埋めません。

多くのスタジオで、内装コンセプトは今もスケッチと2Dレンダリングから始まります。伝達手段としては優れていますが、構造的な欠点があります。ビジュアルが「承認」された後、技術部門が依存する3D幾何形状はほぼ一から作り直されるのです。作り直しのたびに面品質が劣化し、日程が滑る余地が生まれます。

2DレンダリングとAI画像だけでは埋まらない理由

スケッチ優先・画像のみのワークフローの核心的な欠点は単純です。

2Dレンダリングは — 手描きでもCGでもAI生成でも — 伝達の道具であって、設計の道具ではありません。

Midjourneyのような画像生成AIは、ムードボードや参照資料の作成には強力です。しかし単体で使う限り、この構造的問題は解きません。純粋なAI画像にはしばしば遠近の破綻があり、空間的な正確さを持たず、そして決定的なことに使える幾何データが一切含まれていません。人間工学の検討にもパッケージング検証にも使えません。

結果として、私どもがよく目にする状態が生まれます。会議を減らすのではなく、増やす美しいレンダリングです。画像が増えるほど主観的な議論が増え、その一方で実際の3Dデータは時間に追われながら後で作ることになります。

業界が今必要としているのは、もっと美しい内装レンダリングではありません。速く出てくる「作れる」アウトプット — 判断できるだけの説得力があり、かつ技術部門が早い段階から会話に加われるだけの幾何的な信頼性を持つデータです。

Sub-D+AIというハイブリッド

PSH Designではここ数年、自動車内装のコンセプト開発に新しい進め方を導入してきました。Sub-Dモデリングを土台に据え、その上でAIによる視覚反復を回す方法です。

これは完成車メーカーの既存プロセスを置き換える魔法の道具ではありません。コンセプトを加速させるための進め方です。実物の幾何形状を早い段階でテーブルに載せ、その上でAIを使って視覚的な反復時間を大幅に圧縮します。

先に二つの用語を定義しておきます。

  • クラスAサーフェシングとは、自動車生産における面品質の最高基準です。すべての移行部で反射・曲率・接線の厳密な数学的連続性を満たす面を指します。最終的にお客様が見て評価するのがこの面です。
  • 判断に使える幾何形状(decision-ready geometry)とは、デザイン承認に足るだけの説得力を持ちながら、同時に技術部門がモデルを作り直すことなくパッケージング・人間工学・成立性の検討を始められるだけの正確さを持つ3Dデータのことです。

Sub-Dを土台にAIによる視覚反復を重ねる自動車内装コンセプトの進め方

 

なぜSub-Dが譲れない土台なのか

サブディビジョンサーフェス(Sub-D)は、粗いメッシュを細分化して滑らかで連続した面を作る手法です。自動車内装は有機的で、作り込まれ、ごまかしの利かない面が大半を占めるため、Sub-Dはとりわけ相性が良いといえます。

デザインディレクターや技術リーダーの視点で並べると、こうなります。

  • ポリゴンメッシュ — ブロックアウトは速いものの、後工程のクラスAサーフェシングや高品質な内装面に必要な連続性・曲率制御を欠くことが多い。
  • NURBS — 最終的なクラスA生産データには最適だが、方向性がまだ動いている初期探索の段階では重く、相対的に遅い。
  • Sub-D — コンセプト段階の素早い反復に耐える柔軟さを持ちながら、生産データが必要になった段階でNURBS/クラスAへ変換できるだけの構造を保てる。

Sub-Dを土台にした内装コンセプトの進め方では、次のことが可能になります。

  • 初日から空間的に正確です。スケッチや純粋な2Dレンダリングにありがちな遠近の破綻や「ごまかした」プロポーションが入りません。
  • ブロックアウト段階で人間工学とパッケージングを検証できます。レッグルーム、手の届く範囲、視線、HMIのおおまかな配置を、クレイを削る前に確認できます。
  • Sub-Dが「真値の層」になります。AIが生成するすべてのレンダリング、すべてのムード探索が、最初からクラスAの論理を尊重した幾何形状の上に載ります。

Sub-Dによる自動車内装のブロックアウト。トポロジーは後のクラスA変換を前提に構成されている

 

AIの役割は視覚の知能であって、幾何形状の代替ではない

この進め方において、AIはデザイナーを置き換えませんし、幾何形状も置き換えません。AIが持ち込むのは視覚の知能です。正しい幾何形状の上で、素材・照明・雰囲気をどれだけ速く「見る」ことができるか、そこを加速します。

三種類のツールがそれぞれ役割を持ちます。

  • Midjourney(同種のツールを含む) — 方向を探す道具として使います。内装のデザイン言語、素材の組み合わせ、照明の雰囲気について30〜50点の参照画像を生成します。出てくるのは最終デザインではなく、質の高いビジュアル・ブリーフです。チームが方向性を揃えるのに、数日ではなく数時間で済みます。
  • Vizcom — テキストから画像を作るAIとの決定的な違いは、3Dの上に描けることです。デザイナーが内装のSub-Dブロックアウトを読み込み、LEDのライン、素材の切り替え、ディテールの分割を数本のストロークで示すと、AIが実際の3D幾何形状に拘束された状態でフォトリアルな内装画像を生成します。カメラアングル、プロポーション、空間関係が嘘をつきません。
  • KREA.AI — リアルタイムの提示層です。3Dモデルを回したり調整したりすると、AIレンダリングがその場で追従します。決定をその部屋の中で起こしたい顧客プレゼンや社内すり合わせに向いています。三往復のメールを待つ必要がありません。

実務としては、こうなります。Sub-Dが幾何の真値を担い、AIが視覚の反復を担う。

頑健な幾何形状がなければ、AIは印象的だが作れない画像を生みます。AIがなければ、幾何形状は伝えるのにも視覚的に回すのにも時間がかかります。

3ステップのコンセプト・ループ

ループ1:方向を決める(2〜4時間)

目的 — デザインチームと関係者の双方が反応できる、明確な内装コンセプトの方向性を三つ用意する。
使うもの — ブランドの内装デザイン言語に沿った参照パックをAIで生成。Blender上のSub-Dで各方向の素早いブロックアウト。Vizcomでその幾何形状の上に速いフォトリアル表現。
時間 — 単純な方向性と明確なブリーフであれば、従来のスケッチ+レンダリングのループが要していた2〜3日ではなく、2〜4時間で完了できます(私どもの経験則です)。

ループ2:幾何形状を作り込む(1〜2日)

目的 — 主要面が定義されたSub-D内装モデルを仕上げる。インストルメントパネル、ドアトリム、コンソール、クラスター、主要な移行部。
使うもの — Blender上でSub-Dのトポロジー、曲率連続性、面の流れを整える。Vizcomで素材ゾーン、色分け、照明シナリオをSub-D幾何形状の上で直接検討。
時間 — 選ばれた方向性を、設計と技術の双方が根拠のあるコメントを出せる水準まで持ち上げるのに、通常1〜2営業日

ループ3:判断できるアウトプット(約1日)

目的 — 顧客に提示でき、かつ技術部門が抽出できるアウトプット、すなわち判断に使える幾何形状を出す。
成果物 — NURBS/クラスAへの変換を前提に構成された最終Sub-Dファイル。社内・経営層レビュー用の内装レンダリング一式。人間工学チェックと初期パッケージングの会話に使える幾何形状とビュー。KREAによるリアルタイム提示。
時間 — ループ2の後、およそ1営業日

コンセプトから判断可能な幾何形状までを三つのループで回す自動車内装の進め方

三つのループ。コンセプトから幾何形状まで一本の糸でつながり、承認後に一から作り直す工程がありません。

 

デザインディレクターとプログラムマネージャーにとっての利点

私どもの経験上、繰り返し現れる利点は三つです。

  • 幾何形状を保ったまま日程が縮む。従来はブリーフから合意可能な3D方向性まで8〜16週間。Sub-D+AIのループでは、同等の「判断できる」地点までおよそ5営業日 — ただしこれはパイロット案件での実績であり、プログラムの複雑さと組織側の準備状況によって変わります。幾何形状は一から作り直されることがなく、初日からクラスAを意識した形で育ちます。
  • 初日から技術部門が抽出できる。「美しいレンダリング、ただしCADに作り直しが必要」がなくなります。コンセプトが承認された時点で、Sub-D幾何形状をNURBS/クラスAの経路に乗せられます。技術部門が絵ではなく実データで早期に参加できます。
  • 顧客プレゼンの場で反復できる。静止画のレンダリングでは、一つの判断ごとに何日もの往復が生じがちです。KREAのようなツールを使えば、本物のSub-D幾何形状の上でコックピットを回し、素材と照明をその場で調整できます。

正直な限界 — この進め方でできること、できないこと

Sub-D+AIの内装ワークフローを、クラスA設計や完成車メーカーの確立されたプロセスを置き換える魔法だとは考えていません。コンセプトの速さとサーフェシングの深さをつなぐ橋であって、そのどちらの代わりでもありません。

コンセプト段階専用であり、最終クラスAではありません。主な成果物はクラスAへの明確な道筋を持つコンセプト段階のSub-D幾何形状です。最終的な生産データは、従来どおりICEM SurfとAlias、そして完成車メーカーの面承認ゲートを通ります。PSH Designではこの進め方でコンセプト段階に面の真値を持ち込み、その後クラスAサーフェシングのチームに引き渡します。

AIレンダリングの精度には限界があります。クロームやガラスのような強い鏡面反射を持つ素材では、AIの限界がはっきり出ます。AIレンダリングは雰囲気と構図を素早く探るための手段と位置づけ、要となるビューは必要に応じて従来のビジュアライゼーションで仕上げます。

知的財産と機密の管理は厳格に行います。機密のブリーフや幾何形状を公開のAIサービスに投入することはありません。案件に応じて、自社ホスト型もしくは企業向けのAIを用いるか、機密データを公開インフラから切り離して扱います。

Sub-Dの技量は譲れません。AIは質の悪いSub-D幾何形状を救えません。トポロジーが悪ければ結果も悪くなります。17年以上のクラスAサーフェシング経験が、私どもの内装Sub-Dの作り方を直接形づくっています。すべてのモデルを「クラスAに移行できる」前提で構築します。

実例 — 英国プレミアムブランドのコンパクトSUV内装

本年、PSH DesignはこのSub-D+AI内装コンセプトの進め方を、英国のプレミアムブランド向けのパイロット案件に適用しました。独自の内装デザイン言語と厳しい面品質基準で知られるセグメントの、コンパクト・ラグジュアリーSUVです。

前提 — 圧縮された内装コンセプト日程、面品質への非常に高い期待値、複数の素材ゾーン(レザー、サステナブル素材のファブリック、金属調仕上げ、アンビエントライト)。

進め方 — ブランドの引き算的でモダンなラグジュアリー内装言語に沿った参照ボードをAIで構築。Blender上でコックピット、インストルメントパネル、ドアトリム、センターコンソールのSub-Dブロックアウトを作成し、トポロジーは後のクラスAサーフェシングを前提に準備。Vizcomで素材の切り替え、ディテール、照明をSub-D幾何形状の上で直接反復。

成果 — 人間工学チェックとパッケージングの会話にそのまま使えるSub-D内装幾何形状一式。社内・経営層レビュー用のレンダリング一式。そしてこの進め方が既存の完成車メーカーのゲートを置き換えるのではなく、どう接続するかを示した文書。

このパイロットのコンセプト段階は、従来のスケッチ→レンダリング→作り直しの流れを用いた同等プログラムと比べて明確に短く終わり、同時に私ども自身のプレミアム内装向け面品質基準を満たしました。通常であればクレイレビューで初めて現れるはずの面の問題が、デジタルのループの中で — 変更に週ではなく時間しかかからない段階で — 発見され、修正されています。

公開資料では完成車メーカー名、車種名、商業的に特定可能な情報は一切用いません。すべての事例は守秘義務に沿い「英国のプレミアムブランド」「コンパクト・ラグジュアリーSUV」の水準にとどめています。

Sub-D幾何形状の上でAIによる素材と照明の反復を行った自動車内装コンセプト

 

よくあるご質問

自動車内装のコンセプト開発には通常どのくらいかかりますか。
従来の進め方では、ブリーフから承認された3D方向性まで8〜16週間が一般的です。Sub-D+AIのハイブリッドでは、ブリーフが明確な比較的単純なプログラムについて、パイロット案件の実績としておよそ5営業日まで圧縮できています。

Sub-D幾何形状はそのままクラスAサーフェシングに使えますか。
Sub-Dの出力は最終的なクラスAデータではありません。ただしNURBS/クラスAの工程に変換できる構造化された土台を提供するため、コンセプトレンダリングから始める場合と比べて作り直しの時間を大きく削減できます。

AIを使った内装デザインで機密は守られますか。
お客様のブリーフや幾何形状を公開のAIサービスに投入すべきではありません。責任ある実装では、自社ホスト型または企業向けのAIを、知的財産とデータ利用について明確な取り決めのうえで用いるか、機密データを公開AIに接続しないインフラ上に置きます。

自動車設計におけるSub-DとNURBSの違いは何ですか。
Sub-Dは柔軟性と速度により、コンセプト探索に向いています。NURBSは最終的なクラスA生産データの標準です。頑健な内装ワークフローにおいて、この二つは競合ではなく補完関係にあります。コンセプト段階の幾何形状にSub-D、生産面にNURBSです。

AIで加速した設計の先を行くのか、すでにそれで納めているのか

道具はすでに存在します。この進め方は、日程・予算・ブランド基準・面品質という現実の制約を持つ実際の内装ブリーフの中で、検証され磨かれている最中です。今これを磨いているスタジオと設計リーダーは、「準備ができた」と発表することはありません。すでにそれで納めているからです。

自動車内装のコンセプト開発をご検討中で、Sub-Dモデリング+AIの進め方が御社のプログラム — 御社のブランド、御社のプロセス、御社の知的財産上の制約 — にどう接続できるかをお知りになりたい場合は、お問い合わせください。

日本語でのご連絡と書類のやり取りも承ります:https://pshdesign.com/rfq-free-test-project/

関連ページ

クラスAサーフェスとは何か — G0からG3までの連続性と、その確かめ方
リバースエンジニアリング受託 — スキャンデータから、そのまま使えるネイティブCADへ

 

Bui Ngoc Phuong|PSH Design 代表

 

PSH Design

17+ years of CAS, Class A Surfacing, CAD and Reverse Engineering for Automotive, Aerospace, Medical and Industrial, to OEM standard.

Work of this kind is easier to judge than to describe.

Begin with one part →

Hotline
Hotline
WhatsApp
WhatsApp
Viber
Viber