測定会社がCADを内製するときの4つの費用、納期1日の本当の価値、そして取引先評価表を通じて測定会社が成長する仕組み。IATF 16949・JIS Q 9100の要求事項から読み解きます。
CADを社内で持つか、外注するか — 測定会社の費用・納期・成長
3Dスキャナーを持つ測定会社は、いずれ「CADもうちでやるべきか」と考えます。設備もデータも手元にあるので、人員の問題に見えます。しかし実際は違います。これは、経営者と一番優秀な技術者の時間と注意をどこに使うかという問題であり、天秤の反対側に載る、ほとんど誰も計算しない数字の問題です。
この記事は、スキャンデータのCAD化を事業の側面から考えます。内容は3つです。
- 社内に体制を作ると実際にいくらかかるか — 費用は4つ。そのうち最大のものは、請求書には現れません。
- 納期1日の価値 — データを待つ工場にとっての1日。見積を2社比べるとき、いつも抜け落ちる数字です。
- 測定会社は実際にどう成長するのか — 正しく納め続けた記録が、なぜ測定会社の名前の付いた評価表に残り、展示会のブースでは得られない形で積み上がっていくのか。ほとんど誰も書かない部分です。
技術的な側面 — 作り直しの方法、偏差の数値、データ形式 — はスキャンデータのCAD化の記事にまとめています。
社内に体制を作ると、実際にいくらかかるか
費用は4つあります。4つ目は、たいてい最初の3つを合わせたよりも大きくなります。
1. ソフトウェア — 一度きりの支出ではない
最低限の構成は2層です。メッシュを処理して形状を作り直すリバースエンジニアリング専用ソフトと、仕上げてネイティブで出力するための主要CADが最低1ライセンス。
費用が膨らむのは、この「最低1ライセンス」のところです。エンドユーザーごとに使うCADが違うからです。ある工場はSolidWorks、あるメーカーはCreo、ある一次サプライヤーはCATIAかNX。3社すべてにネイティブで納めるには、3つすべてを持つ必要があります。ハイエンドCADのライセンスは、リバースエンジニアリングの仕事がない月にも払い続ける年間費用です。
海外で公表されている価格(商用版、執筆時点):
| ソフトウェア | 公表価格 | 条件 |
|---|---|---|
| Geomagic Design X Go(Hexagon) | 1,900ドルから | エントリー版。上位版は要問い合わせ |
| QUICKSURFACE Pro(KVS) | 年1,700ユーロ | 永久ライセンス5,250ユーロ |
| SOLIDWORKS Professional | 年3,456ドル | — |
| Creo Design Essentials(PTC) | 年3,190ドル/ユーザー | ドイツ価格:3か月ノードロック1,463ユーロ |
| PolyWorks|Modeler · CATIA · Siemens NX | 非公表 | 販売店経由、ライセンスごとに交渉 |
通貨も条件もばらばらなので、きれいな合計にはなりません。大事なのは合計ではなく構造です。専用ソフト1本と主要CAD2本で、誰も教育を受ける前から年間数千ドル規模になり、仕事の少ない月にも全額かかります。
下の3つは価格を公表していません。エンドユーザーがCATIAやNXを使っていてネイティブ納品が必要な場合、それは別の交渉になり、量が少ないうちは安くなりません。
2. 習得にかかる時間 — まったく違う2種類の「できる」
ソフトの操作を覚えるのは数週間です。どのメーカーも研修を開き、資料を公開し、認定証を出しています。まじめな技術者なら修了できます。
量産に使えるパラメトリックCADを作れるようになるには、はるかに長くかかります。当社の経験では、金型に入る部品を一人で任せられるまでに数年です。他社には他社の数字があるでしょうが、あまり変わらないのは、この2つの技能が思われているほど関連していないという点です。
違いはこうです。ソフトが教えるのはボタンの場所であって、どのボタンを押すべきかではありません。メッシュをどこで分けるか、どの面をデータムにするか、どの面が機能上意味を持ち、どの面が鋳造の跡にすぎないか、どの寸法を公称値に丸め、どれをそのままにするか — これらはエンジニアリングの判断です。ここで判断を誤った人は、画面上では完璧に見えるモデルを作ります。


3. 投資しても、能力は保証されない
メーカーの認定証を持っていても、問題を内部に抱えたモデルを作ることはあります。技術記事で説明したとおり、後工程で効いてくるエラーは偏差チェックには現れないからです。
つまり、教育には明確なゴールがありません。8週目に「この人はもう大丈夫」と分かる試験はありません。それを示すのは、納めて戻ってこなかった部品の数だけであり、その数は実際の仕事量でしか積み上がりません。立ち上げたばかりの測定会社には、まだその量がありません。
さらに人材流出のリスクがあります。何年もかけて育てた人は、どの会社も採用したい人です。
4. 機会費用 — 4つの中で最大のもの
最初の3つはお金で測れます。4つ目は測れません。
経営者と社内で一番優秀な技術者の注意力は、会社にとって最も希少な資源です。CAD部門を立ち上げるのに使う1か月は、測定会社が構造的に強い分野に使えなかった1か月です。
既存のお客様の中で、仕事の量を増やすこと。
要求をきちんと聞く。現場に出向いてスキャンする。正しく、約束より早く納める。それを楽に繰り返す。
このサイクルが一回まわるたびに、評判が一層積み重なります。そして測定の世界の評判は、広告よりもずっと、お客様自身の人の輪を通じて伝わります。品質管理者は品質管理者と話し、技術者は転職するときに取引先リストを持っていきます。
これがはずみ車です。今の仕事をきちんとこなす → お客様が新しい種類の仕事を任せる → 評判が新しい取引先へ伝わる → 獲得コストはほとんど変わらずに仕事量が増える。
はずみ車を回すには、時間と注意が必要です。新しいCAD部門が必要とするのも、まったく同じ資源です。そして成果が出るまでの時間は、はるかに長くかかります。
納期1日の本当の価値
ここまでが費用の側です。ここからは天秤の反対側、見積を比べるときにいつも抜け落ちる側です。
CADモデルそのもののために待っている人はいません。その後ろには、日程の決まった工程が続いています。

直接の計算
正しい3Dデータを待って作業を始められない金型部門を思い浮かべてください。待っているのは一人ではなく部門全体です。CAMプログラマー、機械オペレーター、監督者、そしてすでに日程に組み込まれた機械。
待ちのコスト =(時間あたり人件費 × 待っている人数 × 時間)+ 止まっている機械の時間
これが何であり、何でないかに注意してください。これは、人と機械が止まっている間に発生しているコストの見積 — すでに払うことが決まっていて、何も生み出していないお金です。データが早く届いたときに帳簿に現れるお金ではありません。早く届くことの利益は、このコストを避けることと、その後の枠を守ることにあります。
この式には、ぜひ御社や取引先の工場の実際の数字を入れてみてください。中規模の部門なら、直接の計算だけで、1日の価値が部品一点の設計費全体と同じ桁になることが少なくありません。
連鎖の計算
ここまでは一工程だけの話です。実際の工場では、工程がぴったり連なっています。
金型 → 射出成形 → めっき・塗装 → 組立 → 検査 → 梱包 → 出荷
どの工程も枠で予約されています。そして生産計画は、直線的には伸び縮みしません。
前工程で1日遅れても、後ろで1日の遅れで済むとは限りません。遅れのせいで予約していた成形の枠を逃せば、失うのは次に空く枠までの待ち時間 — 数日になることもあります。同じことがめっきでも起こり得ますし、めっきは工場が日程を管理できない外注先であることも多いのです。
これは工場の待ち行列理論が、稼働率と待ち時間の非線形の関係として説明している現象です。HoppとSpearmanは『Factory Physics』で、稼働率が100%に近づくほど稼働率と遅れの曲線が急になり、工程の最初の乱れが最後で増幅され得ることを示しました。どれだけ増幅されるかは、その工場のバッファ、ロットの大きさ、稼働の詰まり具合で決まります。余裕のある工場は1日を吸収し、フル稼働に近い工場は吸収できません。忙しい工場は、曲線の急な部分にいます。
ここから2つのことが言えます。
第一に、非対称性です。1日早ければ助かります。1日遅れれば、早かったときに助かった分よりずっと大きな損害になり得ます。つまり、単純な速さより確実さのほうが価値があるということです。いつも期日を守る外注先は、ときどき非常に速く、ときどき遅れる外注先より価値があります。
第二に、比べるべき数字は設計費ではありません。一点あたり数万円の差の2社から選ぶとき、テーブルに載せるべきなのは、それぞれが後工程で前倒しにする日数、あるいは失わせる日数の価値です。
産業機械の仕事の多くで、その価値は設計費そのものを上回ります。これは売り込みの理屈ではありません。生産管理者なら誰でも、自分の工場の数字で紙一枚で計算できることです。
測定会社は実際にどう成長するのか
もう一段階あります。ほとんど誰も話題にしない段階です。
直す必要のないデータを受け取ったとき、お客様の側では何が起きているのでしょうか。
手直しは記録される。正しく納めたことも記録される。
仕組みのある工場では、外注先のデータを直すと記録が残ります。誰かを責めるためではなく、その技術者が自分の時間の使い道を説明しなければならないからです。
- 設計変更依頼と、データ再提出の回数
- 外部のファイルを修正するのに使った社内技術者の工数
- さかのぼるとデータに行き着く日程の遅れ
- モデルの誤りによる不良や金型の手直し
これらの数字は社内報告に入り、そこから取引先評価表に入ります。
そして多くの外注先が意識していないのは、多くのメーカーにとって取引先の実績の監視が任意の管理習慣ではなく、認証を受けている品質マネジメントシステムの要求事項だということです。
- IATF 16949の8.4.2.4項は、自動車メーカーに外部提供者の実績の監視を求めています。大手グループが運用する取引先評価の仕組みは、これを満たすためのものです。
- AS9100D(日本ではJIS Q 9100)の8.4項は、航空宇宙分野で同等の要求 — 外部提供者の継続的な監視 — を定めています。
規格が求めているのは監視であり、特定の評価表の形式ではありません。評価表は各社が独自に作ります。ただ、公表されている例はおおむね似ています。PPM、初回合格率、是正処置の完了といった品質指標が最も大きな比重を持ち、次が納期(通常は納期どおり・数量どおり)、その次がコストです。
| 取引先評価表が測るもの | 一般的な比重 | 何で動くか |
|---|---|---|
| 品質 — PPM、初回合格率、是正処置の完了 | 最大 | 一度で正しいデータ |
| 納期 — 納期どおり・数量どおり | 次に大きい | 毎回、期日を守ること |
| コスト | その次 | 交渉 |
| 外注先の測定機器の精度 | 評価されない | — |
2つのことを強調しておきます。第一に、納期の実績は価格とは別に独立して評価されます。速さだけでなく、期日を守り続けることが点数になります。第二に、公表されている例には、外注先の測定機器の精度を評価する行がありません。
そして評価表には、測定会社の名前が載っている
ここが転換点です。見えてしまえば当たり前なので、見落としやすいところです。
エンドユーザーは、誰がモデルを作ったかを知りません。知る必要もありません。評価表に残るのは「この測定会社のデータは一度で使える」ということです。
正しい作り直しの価値 — 技術記事で述べたエンジニアリングの判断のすべて — は、測定会社の名前に積み上がります。測定会社が管理できない記録ですが、納品のたびに更新されます。
良い評価が続けば、立場が変わることもある
3回期日どおりに納めても、何も変わりません。長く続いた記録は、多くを変え得ます。
「承認取引先リストの一社」から「最初に声をかけられる一社」へ — 相見積なしで、設計に関われるほど早い段階からプロジェクトに呼ばれ、新しい製品ラインを立ち上げるときにまた声がかかる。その立場の呼び名は会社によって違い、自動的に得られるものではなく与えられるものです。記録はそれを可能にするだけで、約束はしません。
それより確かなのは、技術者が会社を移るとき、取引先リストを持っていくことです。この業界で評判が動くのは、仕事を楽にしてもらった人の記憶を通じてです。
ほかの仕事の取り方と比べると
| チャネル | 接触1件あたりのコスト | 年々積み上がるか | 誰が推薦してくれるか |
|---|---|---|---|
| 展示会のブース | 高い — 毎年ゼロから払い直し | いいえ | 誰も |
| セミナー、ウェビナー | 中程度 | ほとんどしない | 誰も |
| 電話営業 | 1件は安いが、成約率はとても低い | いいえ | 誰も |
| 有料広告とコンテンツ | さまざま | 少し | 誰も |
| 正しく、早く、繰り返し納めること | 仕事をする費用以外はほぼゼロ | はい | お客様自身の技術者 |
海外のB2Bのリード獲得単価の調査では、展示会や対面イベントが高い側で1件約840ドル、紹介が安い側で約25ドルとされています。B2B全般の数字であり測定業界に限ったものではないので、業界の数字ではなく差の大きさの目安として読んでください。そして紹介で来た見込み客には、誰かの言葉が添えられています。
一番下の行は、上の4行と2つの点で違います。積み上がること — 今年の評判は来年の出発点ですが、今年のブースは来年のブース代を1円も下げません。そして、推薦しているのが自分ではないことです。
陥りやすい3つの支出
成長しようとするとき、測定会社がまず手をつけがちなことが3つあります。3つとも、成長への投資に感じられます。
もっと精度の高い機器を買う。より良い測定機器は無駄ではありません。扱える仕事の幅を広げ、部品によってはスキャンがきれいになる分、作り直しも楽になります。ただ、お客様が評価している数字は動きません。評価表に載るのは納期の実績と手直しの率です。より精度の高いスキャナーはどちらも変えませんが、一度で正しく作られたCADモデルは両方を変えます。
ソフトを買い足し、社内にCAD部門を作る。上で述べた4つの費用がかかり、そのうち最大のものはお金で測れません。
セミナーを開き、ブースを出し、広告費を増やす。効果はあります。ただし買えるのは注目であって信頼ではなく、積み上がりません。
3つに共通するのは、買いやすいことです。購入の決定は行動した実感があり、請求書と完了日があります。会社を成長させるもの — 正しく早く納め、それを繰り返して、お客様にとって当たり前になるまで続けること — は買えません。実行するしかなく、結果が見えるまでに時間がかかります。
正しい問い
成長を目指す測定会社は、たいてい「どうすればもっと多くの人に知ってもらえるか」と問います。
より強い問いはこうです。「お客様側の技術者が、うちの名前を口にする理由をどう作るか」
この2つの問いは、まったく違うお金の使い方につながります。そして今年の予算を使い切った後に何かが残るのは、片方だけです。
PSH Designの立ち位置
当社はこの問いの「外注」側の答えの一つです。そのことを踏まえて、以下をお読みください。
PSH Designは2009年からハノイで活動する設計スタジオです。スキャンデータ、CMMデータ、図面をパラメトリックCADに作り直しており、2009年から年間約300部品・約3,000時間、作り直しになった部品はありません。

「作り直しになった部品はない」の意味
定義のない主張には価値がないので、当社が自らに課している定義を示します。2009年以来、当社が納めた部品で、作り直しのために戻ってきたものはなく、後工程 — 金型、治具、機械加工 — で不具合を起こしたものもありません。
納品後にモデルが一度も変更されなかったという意味ではありません。お客様から寸法の問い合わせがあり、設計変更で半径が改訂され、別のCAD用に形式を出し直す。それは使われ続けているモデルの通常の仕事であり、ここでは数えていません。
数えているのは、測定会社のお金と信用を失わせる失敗です。捨てて作り直したモデル、あるいは金属を削るまで誰も気づかなかった誤りのあるモデル。2009年から年間約300部品の中で、どちらも起きていません。
当社は測定会社の名前で仕事をします。スキャンは御社に、お客様との関係も御社に残り、エンドユーザーに届くものに当社は登場しません。上の章を読めば理由は明らかだと思います。正しく納めることで得られる評判は、当社ではなく測定会社の名前に積み上がらなければなりません。そこでこそ価値を生み、当社が誠実であり続ける理由にもなります — 当社のお客様は測定会社であり、その先のお客様ではありません。具体的な進め方は測定会社のためのリバースエンジニアリング外注にまとめています。
通常の納期は、機械部品1点で2日です。日本とベトナムの時差は2時間なので、ほぼ同じ営業時間で動けます。午前中に送られた質問には、モデルの前に座っている担当者がその日の午前中に答えます。2日という数字は変わりませんが、待ち時間のうち何もしていない時間が減ります。
料金について。当社の料金は、同等の設計者を測定会社が自ら外部契約する場合の約70%です。上で述べた4つの費用を数える前の、同じ条件での比較です。
詳しくはリバースエンジニアリング受託サービスのページをご覧ください。
まず1部品をお送りください
スキャンデータ、CMMの測定レポート、図面 — どれでも1部品をお送りください。当社負担で作成し、取引条件のお話の前に、御社の基準で判断していただけます。
基準に満たなければ、失うのはファイルを送る手間だけです。
1部品の無料試作を依頼する →(フォームは英語ですが、日本語でご記入いただけます)
PSH Designのリバースエンジニアリング
こんな方に:測定・CMM・3Dスキャンの会社の方、スキャンやCMMのデータをネイティブのパラメトリックCADにしたい設計・生産技術部門の方。向いていない方:3Dプリント用の簡易メッシュや、エンジニアリングの意図を伴わないモデリングだけが必要な方。
この順番でお読みください
言葉ではなく、仕事で判断してください。スキャンデータ、CMMレポート、図面のどれかで1部品をお送りいただければ、当社負担で作成します →
PSH Design
2009年創業。クラスAサーフェシング、リバースエンジニアリング、CAD設計、コンセプトデザインを、自動車・航空宇宙・医療・産業機械の分野に、OEM基準の品質でお届けしています。
クラスAサーフェシング · リバースエンジニアリング · キュービング・検具設計 · コンセプトデザイン
この種の仕事は、説明するより見ていただくほうが早く伝わります。フォームは英語ですが、日本語でご記入いただけます。







